2月とは思えないほどの暖かいお日様が入る文庫で、
入ったとたんに気がついたのは、ドールハウスで誰か遊んでくれたらしい気配。
うれしいなあ。
和子さんが、お寺にお子さん連れのお客様があって、
何人かで遊んでくれたと、教えてくれた。
それは良かった、もともと遊んでもらうために作ったのだから。
そう言いながらもう一つ気づいたのは、絵本の本棚。
本棚から大きく出っ張っているのは、佐野洋子作の『100万回生きたねこ』。
知ってる本がある、とおっしゃっていたそうだから、これに違いない。
100万回生きて、どんなに飼い主にかわいがられても、
自分も飼い主も嫌いで、100万回死んでも全然悲しくなかったのに、
ある時そのねこがのらねこに生まれ変わった時、
自分を誉めない白ねこに出会うのだ。
相手がいとおしいという感情を知ってしまったねこは、
白ねこが死んだ時、初めて泣き、二度と生まれ変わらなくなるのだが、
その不思議さと力強さ、優しさに、心が震える。
長年読み継がれる、大好きな名作だ。
そうか、この本を手に取ってくれたんだ。
文庫の日には最近お客がないけれど、そうやって本のある空間に来て
遊んだり、本を見てくれる人がいたなら、こんなうれしいことはないと思う。
写真はドールハウスに新しく作った小物。
将棋盤の脇の、脇息と、食卓に乗った蛤のお吸い物が仲間入りした。
前回、小さい貝殻が無くて作れなかったお吸い物だが、
思いついて公園の砂場に行ってみたら、あったあった…。
いい年のおばさん(おばあさん?)が、砂場でせっせと砂を掘って、
何をしてるんだろうと思われたに違いない。
サイズの合うのを拾って、くっつけて、粘土で貝の身を入れて、
レジンを注げば完成。
和子さんに昔話を一つ、押し売りして今日の文庫はおしまい。
今日のお話は『魔法のビール』でした。
次の文庫の日は、3月6日です。
(芝 直子)