今日も残暑が厳しくて、お墓の花も干からびている。
水道の水も熱湯で、しばらく出していないと花筒に入れられない。
そんな中、お習字の方々が熱心においでになっている。
文庫は涼しくしてくださっていて、ありがたい。
お客様が無かったので、一人で涼しい文庫でゆっくり本を探す。
この頃探しているのは、堀内誠一さんが挿絵を描いた本だ。
自身でも『ちのはなし』などの科学の本を出しているが、
他の作家の方の作品に絵を描いているのが多いのだ。
渡辺茂男さんとのコラボで『くるまはいくつ』とか、
西内ミナミさんとの『ぐるんぱのようちえん』とか、名作が多い。
その中でも、バーネット作の『秘密の花園』の挿絵がいい。
大好きな本なのに、この中の繊細な白黒の線描きの絵が、
堀内誠一さんの描いたものだとは最近まで知らなかった。
この人の絵は、鮮やかな色合いのポップなものから、
水彩風の大きな絵まで、とても変化に富んでいて、見ていて楽しい。
『秘密の花園』は、児童文学の名作で、50年くらい昔に出版されたもの。
両親を亡くしてインドからイギリスのお屋敷に引き取られた少女と、
体を悪くして部屋に閉じこもったきりの少年との、出会いと再生。
二人とも生い立ちから心を病んでいるが、閉ざされた花園の中で、
花園と共に、次第に再生していくまでの、長い物語だ。
文庫にあるものの、誰も借りてくれたことのない本の一つかもしれない。
読んだらすごく面白くて、特に最後のページなど、
車椅子のはずの少年が、父親と共に堂々と歩いて屋敷に帰るシーンは、
何回読んだか分からない。
なのにこのイラストが、堀内誠一さんだと知らなかったなんて。
まだまだ文庫の本も、知らないことで一杯だわ。
次の文庫の日は、9月30日です。
(芝 直子)