今日のまゆーら

  「天狗童子」 2017年2月18日 

2017年02月19日

 

 

少―しだけ寒さが弛んだ境内に、和子さんが野菜をたくさん干していて、

赤やら白やら、花が咲いたみたい。

一瞬、赤は干しエビに見えたんだけれど、よく見たら人参だった。

 

文庫のお客は永嶋家のおばあちゃん・お母さん・りこちゃん。

三代揃って遊びに来てくれて、りこちゃんがひたすら黙って本を読む傍らで

私たちはせっせとおしゃべりして過ごす。

 

 

 

 

 

りこちゃんは雑音にめげず、名探偵シリーズを5冊も読んでしまったそうだ。

うるさくしてごめんね。

 

ところで、今朝の新聞に、児童文学作家の訃報が二つ並んでいた。

ちいさなうさこちゃん・ミッフィーの作者、ディック・ブルーナさんと、

コロボックルなどでお馴染みの佐藤さとるさん。

 

どちらの作者の本も、文庫にはいっぱいある。

ちょっと数えたら、うさこちゃんシリーズが17冊。

佐藤さとるさんの本は7冊。

ただしどれもすごく古い本で、それだけこの二人の本は

児童文学の古典的名作だということだ。

 

アニメやゲームで育った現代の子どもたちには、

いわゆる古典的名作と言うだけでは、なかなか手にとってもらいにくい気がする。

うさこちゃんシリーズは、今も赤ちゃん絵本の定番の一つだけれど、

コロボックルはどうだろう。

 

でも最近あの有川浩さんが、佐藤さとるさんの『だれも知らない小さな国』を

元にして、『だれもが知っている小さな国』を書いている位だから、

どうだろうなあ…と、勝手にあれこれ考えながら文庫に座っていた。

 

で、そこへ来たりこちゃんたちに、佐藤さとるさんの新しい本(!)の

話をしてみた。 『天狗童子』。

笛の上手な山番の与平の元に、大天狗が子どものカラス天狗の

九郎丸を連れて来て、笛を教えてほしいと言って預けていく。

 

 

 

 

 

人間の姿になった九郎丸をいとおしい思い、

天狗の世界に返したくなくなった与平は、変身のためのカラス蓑を焼こうとする。

 

ここから物語はどんどん広がり、天狗の世界や戦国時代の国とりの話など

すごく読みごたえがあって面白い。…のだが。

 

なぜかページ数にして残り1割か2割になったころから、

一気に描写が減っていく。

尻切れトンボと言うほどではなくて、一応結末までちゃんと書いてるのだけれど、

一気にそこからは粗筋の羅列になってしまったような???

 

40年ほど前に書きかけていた作品に、最近になって手を入れて出版したとの

後書きだったが、だとしたらご高齢になって色々大変だったのかなあと

全くのシロートが勝手に偉そうに思ってしまったりもするのだ。

 

でもとにかく面白いし、誰か読んでくれるのなら文庫に持って行こう。

ホント、惜しい…とまだ偉そうに言ってしまうのだけれど。

 

私が読んだのはごく最近出版された講談社の文庫本なので、

その前に児童書の出版社から出た物の方が読みやすいかも。

 

佐藤さとる氏の御冥福をお祈り申し上げます。

オランダのブルーナさんにも、ご冥福をお祈り…っていう言葉でいいのかしら。

これって、仏教の言葉ですか?

 

なにはともあれ偉大な児童文学と絵本の先駆者お二人に、

心からのお礼を申し上げます。

子どもたちのために、たくさんの作品をありがとうございました。

 

次の文庫の日は、3月4日です。

(芝 直子)