冷たい雨ふりの一日で、文庫で本を読んでいたら、
和子さんが本堂のお習字の会を見に行こうと、誘ってくださった。
恐る恐る覗いてみたら、皆さん真剣にお稽古中。
今日は色紙に一文字を書くとのこと。
和子さんが頑張って「冴」という字を繰り返しておられるのを、見学する。
本堂に、ピーンと緊張した空気があって、いいなあと思ってしまう。
「芝さんも書かへん?」 「いやいや!」 と、全力でご辞退。
文庫に戻って、探し物。
渡辺茂男作の『もりのへなそうる』だ。
たまたま依頼されて、一昨年開かれた講演会のテープ起こしをしているのだが、
それが、渡辺茂男さんの息子、渡辺鉄太さんの講演会。
テーマは「へなそうるのいる森」。
お父さんと、へなそうる他の作品にまつわるお話だった。
私は出席しなかったが、因みにこの日は台風直撃の日で、大変だったそうだ。
テープ起こしならぬ、CD起こし(?)で、
昔読んだ『もりのへなそうる』を懐かしく思い出しながら作業。
5歳のてつたくんと、3歳のみつやくんの兄弟が、
近くの森で不思議な卵を見つけて、翌日には卵から孵ったらしい竜に出会う。
お兄ちゃんの言葉を真似しては、舌っ足らずの言葉になるみつやくん。
みつやくんの言葉をそっくり真似する、竜のへなそうる。
講演では、このお話に出てくる、てつたくんは、
息子である鉄太氏本人がモデルであるとか、でも実際は違うとか、
竜のへなそうる、は、当初の原稿では、4頭で、名前がはなそうる、ひなそうる、
ふなそうる、へなそうる、だったとかが、語られていて面白かった。
CDなので固有名詞が聞き取りにくく、もう一度文庫で『もりのへなそうる』を
探したのだが、見当たらない。
そういえばしばらく見てないなあ。
念のため台帳を調べたら、この前の書架点検では無くなっていたことが分かった。
あら残念。ずっと前に紛失していたようだ。
いい本なんだけど、新しく入れても、今みたいにお客がないなら…。
どうしたものかと思案してしまった。
次の文庫の日は5月1日です。
(芝 直子)